要約対談2005/08 5/5
・要約は孤独だ
K:さっき孤独だとおしゃったじゃないですか、英語の勉強だとTOFELがあったりTOEICがあったりするから合格するようにやれば、孤独ではないですね。
要約は何点もらえるわけではないし、先生にほめられるわけでもないし、本当に基準のない世界だと思うんですよ。必要性はみんなもっていると思うんです。いろんな人がいろんなことを紹介する時期だと思うんです。
実は私も孤独なわけでして、正解がないところで大学受験でこういう問題が出て生徒はどうしたらいいか分からない、予備校の先生に聞いた答えと学校の先生に聞いた答えが違うなかで、こういうもんだってことを、これとこれは同じものなんだってことを説得しながらやっていくことなんです。
さきほどライフワークとか、大きなことを言ったんですが、要約はこれからのスキルだと思っているからです。もうみんな完成したものではライフワークにはなりませんよね。結局誰かが、いろんな人が要約を追求して、何年もかけてできていくものじゃないですかね。そうすれば、世の中、全部がA4、1枚で書いて面白そうだから読ませてくれって言って、だんだん企画が決まったり、世の中動いていったり、政治家の話が面白そうだから聞いてみようとなったりして。
すごく大きなテーマだと思うんですよ。大きすぎて誰も手がつけられない。文章法なんてみんな書いていますよね。だれも要約できない。
E:海外では要約は例があるんでしょうか。
K:学術論文を書くときに要約をのせる、まあ日本でも一緒ですが、それを徹底的にやらせようということでは、海外のレベルは日本より上だと思います。特に日本語の場合は結論は最後に持ってくる場合が多いだけに一番抵抗があると思うんです。日本人自身を変えるには「大切なことは一番最初に言いましょう」そのあと興味を持ってもらって、じっくりやりましょう、ということになると、意識革命になると思うので、日本でやっていくのは大事なことだと思いますよ。
まず全体をつかむことが、日本人はすごく苦手なんです。だから細かいところを組み合わせるってことになっちゃうんですね。我々の職業のことから言えば、予備校の先生は読解に入る時には部分から入るんですよ。キーワードとかね、これは大切なんですけど、キーワードとかから全体を見ようとするんです。
細かいことは分からなくても、全体が分かっていれば、そのほうが文書を理解したことになると思うんですね。細かい言葉をいっぱいたしていけば、それで全体が見えるわけではないですよね。全体があって、言葉があるということは説明しにくいことなんですが。
E:なんとかしようと思ったら誰かが要約学会かなんか作らなきゃいけなんじゃないですか。
K:そういうことだと思いますよ。
・「図解」よりもよりも、やっぱり要約
E:方法論として図解がありますが、いかがですか。
私はグチャグチャして分かりにくくて好きになれないんですけど、県立宮城大学久恒教授が提唱する「図解」という意味です。
K:久恒さんの「図解」はこんなふうに分かりやすいですよ、と書いてらっしゃるんです。ホームページを見ると、私(久恒)のすべてがわかりますと書いてあるんですが、複雑すぎて分かりにくいんですよ。
http://www.hisatune.net/
単純な図解からだんだん足していきますからね、そうすると、その手順を知っている人しか分からなくなって来ていると思うんですよ。それは定型がないからです。いくらでも拡がるんです。要約には定型があるので、拡がりようがないんです、蓄積するだけですからね。そこら辺のところを考えると全然違うと思うんですよ。やっぱり「図解」はさっきの例でいくと予備校の先生の指導と一緒で、言葉と言葉をイコールで結んだり、矢印で結んだりしていって、部分と部分の関係は分かるんだけど、部分と部分の関係で全体は表せないと思うんです。全体を見るには便利なものじゃないかもしれないですね。
たとえば図解が4種類から5種類のパターンしかなくてそれですべて言い表せるようになっていれば画期的なことだと思うんですが、それはありえないことですから、複雑になって分かりにくくならざるを得ないと思うんです。
先ほど要約学会という話がありましたが、ほんとうにそういう形でいろんな人が追究していかないといけない、でないと「わかりにくい日本」で終わってしまうと思うんです。これから文章の時代になっていくわけですから、長い文章だとうんざりですが、短い文章だとわかりやすいですから。「図解」で解釈するよりストレートですし、みんな読めるし。
E:非常にわかりやすく話していただいてありがとうございました。また。お忙しいところありがとうございます。
・「要約を極める」の要約
最初は対談の後に「要約とは」を、短文でまとめるつもりだった。話を伺っていくうちに単に文書をまとめるいう領域を超えて、生活、人間としての生き方にも言及する深い内容を含むものであることが判明した。要約するのはやめて、雰囲気が伝わるようにまとめてみた。
要約を超えたすばらしい考察を提供いただいた木本さん、本文をまとめるにあたり、企画、取材、編集とご指導いただいた小室先生にお礼を申し上げます。
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